コラム
案件の遅れを早く見つける手順と、進捗率が実態とずれる3つの原因
「遅れているという報告が、納期の1週間前に上がってくる」。受託の案件を抱える会社でよく聞く状態です。
報告が遅い理由は、担当者が隠しているからではありません。本人も遅れていることに気づいていない場合が大半です。
感覚で測った進捗は、遅れを最後まで隠す
進捗の報告が「70%です」で返ってくる案件では、その70%がどこから出た数字かを誰も確認していません。
作業の全体像が担当者の頭の中にしかない状態では、進捗は消化した感覚から作られます。この数字は作業の後半で必ず鈍ります。残っている作業が具体的な形になるのは、着手した後だからです。
そのため遅れは、期間の後半に一度に表面化します。発覚が遅いのは報告の姿勢ではなく、進捗の測り方に原因があります。
進捗率が実態とずれる3つの原因
1. 消化した工数の割合を進捗率と呼んでいる
「100時間の見積で80時間使ったので80%」。この計算は広く使われていますが、かけた時間は進んだ量ではありません。
80時間で終わった作業が計画上60時間分なら、進んだのは60%で、20時間分は超過しています。工数の消化率を進捗率と呼ぶと、この20時間の差が数字のどこにも出ません。
見積工数を超えた時点で進捗が100%を超えてしまうのも、同じ理由です。
2. 90%のまま動かない
90%から先が動かない案件は、残りの10%が分解されていません。
「あとは細かい修正だけ」の中身は、洗い出すと不具合の修正、レビュー指摘の反映、ドキュメント、環境の設定、取引先の確認待ちに分かれます。作業の数が分からないので、終わる日も出ません。
90%という数字は、残っている作業を数えていないことの表明です。数えれば、残り10%が実際は3週間分だと分かります。
3. 完了の定義が人によって違う
同じ「終わりました」が、人によって別の状態を指します。
| 完了と呼ぶ時点 | その先に残っている作業 | 起きること |
|---|---|---|
| 作り終えた時点 | レビュー、指摘の反映、テスト | 完了した作業が後から未完了に戻る |
| レビューが通った時点 | 取引先への提出、検収 | 手戻りの工数が計画に入っていない |
| 検収が終わった時点 | 請求 | 進捗と請求可能日の見込みがずれる |
定義を1つに決めれば、どの時点を採用してもかまいません。決めていない状態が問題です。作った人は終わったと数え、確認する人は終わっていないと数えるため、集計が合いません。
作業を1〜3日の単位に割り、終わったかどうかだけで数える
測り方の型は単純です。
- 作業を1〜3日で終わる単位に割る — 1つの単位に、1人の担当者と1つの完了条件を付ける
- 終わったか終わっていないかの二値で数える — 途中の状態を作らない
- 進捗は終わった単位の計画工数の合計で出す — 感覚の数字を使わない
「50%終わりました」という報告は受け付けません。50%という状態が生まれないように作業を割ることが、1〜3日という長さの目的です。
この単純さが精度を生む理由は2つあります。1つは、二値の集計には主観が入る余地が無いこと。もう1つは、3日を超える単位を置けないため、分解の甘い作業が計画の段階で見つかることです。
1週間以上の単位が残っているなら、その部分はまだ計画になっていません。
かけた工数と、終わった作業の量を分けて見る
二値で数えられるようになると、進捗とコストを別の数字として並べられます。この2つを分けて追う手法がEVM(アーンドバリュー・マネジメント。終わった作業の出来高で進捗を測る方法)です。
使う数字は3つです。
| 数字 | 日本語での意味 | 出し方 |
|---|---|---|
| 計画した価値(PV) | その日までに終わっている予定だった作業の量 | 計画工数 × 時間単価 |
| 終わった作業の価値(EV) | 実際に完了した作業の量。かけた時間ではなく、その作業に見込んでいた工数で数える | 完了した作業の計画工数 × 時間単価 |
| 実際にかかったコスト(AC) | その作業に実際に投入した量 | 実績工数 × 時間単価 |
要点はEVの数え方です。終わった作業は、実際にかかった時間ではなく計画上の工数で数えます。この決め方によって、進んだ量と使った量が別の数字になります。
金額に換算するのは、外注費のように工数で表せない費用を同じ単位に乗せるためです。自社の工数だけで管理する案件なら、時間のまま3つを並べても同じ計算ができます。
3つの数字から、遅れとコスト超過が指数で出る
計画工数800時間、時間単価4,800円の案件で見ます。予算は 800時間 × 4,800円 = 384万円 です。
1か月経過した時点の数字を並べます。
| 項目 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 計画した価値(PV) | 144万円(300時間分) | この時点で終わっている予定だった作業 |
| 終わった作業の価値(EV) | 115.2万円(240時間分) | 実際に完了した作業の計画工数 |
| 実際にかかったコスト(AC) | 158.4万円(330時間分) | 実際に投入した工数 |
| スケジュール差異(SV) | マイナス28.8万円 | 予定より60時間分の作業が終わっていない |
| コスト差異(CV) | マイナス43.2万円 | 終わった量に対して90時間分を使い過ぎている |
| スケジュール効率(SPI) | 0.8 | 予定の8割しか進んでいない |
| コスト効率(CPI) | 0.727 | 投入した工数の7割強しか成果になっていない |
| 完成時の総コスト見込み(EAC) | 528万円 | この効率が続いた場合の着地 |
指数の計算は次のとおりです。
SPI = EV ÷ PV = 115.2万円 ÷ 144万円 = 0.8CPI = EV ÷ AC = 115.2万円 ÷ 158.4万円 = 0.727EAC = 予算 ÷ CPI = 384万円 ÷ 0.727 = 約528万円
SPIとCPIはどちらも1.0が予定どおりで、1.0を下回ると遅れまたはコストの超過を示します。上回っていれば、予定より進んでいる、または見込みより少ない工数で成果が出ているという意味になります。
SPIの0.8は、1か月で予定の8割の作業しか終わっていないことを示します。CPIの0.727は、計画上1時間分の作業に実際は1.375時間かけているという意味です(330時間 ÷ 240時間 = 1.375)。
EACはこの効率が続いた場合の着地です。予算384万円に対して528万円なので、このままなら144万円の超過になります。残りの作業に必要なコストの見込み(ETC)は 528万円 − 158.4万円 = 369.6万円 で、予算の残りである225.6万円では足りません。
つまりこの案件は、1か月の時点で判断材料が出ています。感覚の進捗率で「おおむね順調」と報告されていた場合、同じことが分かるのは納期の直前です。
指数を出すには、案件の設定と日々の記録が必要
EVMの計算は、次の4つが揃って初めて成立します。
- 案件の予算と時間単価 — PV・EV・ACを同じ単位に換算する基準
- 計画の開始日と終了日 — その日までのPVを引くための基準
- 作業単位ごとの計画工数 — EVの元になる数字
- 日々の実績工数 — ACの元になる数字
欠けやすいのは実績工数です。記録が無ければACが埋まらず、CPIもEACも出ません。
案件別の原価の集計が回っていない状態でEVMだけを入れても、指数の分母が埋まらないまま終わります。必要な数字の揃え方は案件別の粗利を出す手順と、集計が合わなくなる3つの原因に整理しています。数字が複数のファイルに分かれていて集まらない場合は、見積をExcelで管理する限界と、乗り換えを判断する4つの兆候で管理の形そのものを見直す観点を挙げています。
遅れが見えたら、範囲・人・納期のどれを動かすかを決める
指数が出ても、動かすものを決めなければ数字を眺めるだけで終わります。選べるのは3つです。
| 動かすもの | 効果 | 制約 |
|---|---|---|
| 範囲を削る | 最も確実に効く。残りの作業量が直接減る | 取引先との合意が必要。削る候補を先に用意しておく |
| 人を増やす | 残りの作業を分担できる | 立ち上げの説明に既存の担当者の時間が取られる。期間の後半では逆効果になる場合がある |
| 納期を延ばす | 品質と原価を守れる | 相手の予定に影響する。連鎖して他の案件の計画も動く |
増員が効かない場面があるのは、追加した人が作業できるようになるまで、説明と確認に既存の担当者の時間が使われるためです。残り2週間の案件に1人を足すと、その2週間のACだけが増えます。
最初に検討するのは範囲です。ただし合意には時間がかかるので、遅れが分かった時点で削る候補を並べ始めます。3つのどれも動かさない場合、動くのは品質か残業のどちらかになります。
週次の確認で聞くことは3つ
会議で聞く内容を3つに固定します。
- 今週終わった作業はどれか — 二値で答えられるものだけを数える
- 残っている作業を1〜3日の単位で挙げられるか — 挙げられない部分が、これから遅れる箇所
- 今週の予定と実績の差はいくらか — 終わった作業の量とかけた工数の両方を見る
「進捗は何%か」は聞きません。この質問には感覚で答えられるため、答えが返ってきても判断できる材料は増えません。
3つのうち2つ目が、最も早く危険を検知します。残りの作業を単位で挙げられない状態は、計画になっていない部分が残っているという意味で、そこが後半の遅れになります。
小さい案件にEVMを使わない
全案件に適用すると運用が重くなります。作業単位ごとに計画工数を置き、完了を記録する手間は、案件の大小にあまり関係なく発生するためです。
基準を先に決めて、超えるものだけを対象にします。置く基準は3つです。
- 金額 — 超過したときに1件で年間の利益計画に響く水準を境にする
- 期間 — 途中で範囲や納期を変えられる長さがあるか。1か月で終わる案件は対象にしない
- 人数 — 複数人で分担していて、残りの作業量が1人の視界に収まらない案件を対象にする
基準に届かない案件は、納期と残っている作業の一覧だけで足ります。指数を出す価値があるのは、着地の見込みを途中で変えられる案件です。対象を絞った運用のほうが、全件に広げた運用より長く続きます。
Set Plan は案件ごとに予算・時間単価・計画の開始終了日を持ち、日々の予定実績入力からPV・EV・AC・SV・CV・SPI・CPI・EACを自動で計算します。課題管理とガントチャートで作業を単位に分けて依存関係を追えるため、残っている作業を数えた状態で週次の確認に入れます。現在の進捗の測り方をお伝えいただければ、どの数字から揃えるべきかをご案内します。