コラム
外注費が原価に載らない4つの穴と、発注管理で埋める手順
「案件は黒字のはずなのに、月次の粗利率が月によって大きく振れる」。外注や協力会社を使っている会社でよく起きる状態です。
原因は集計の精度ではありません。外注費は1件の金額が大きいため、紐づけや計上時点が少しずれるだけで案件の粗利が動きます。
外注費のずれは、労務費のずれより大きく効く
売上500万円、外注費300万円、労務費96万円(200時間 × 時間単価4,800円)、直接経費4万円の案件で考えます。粗利は 500万円 −(300万円 + 96万円 + 4万円)= 100万円 です。
| 見え方 | 売上 | 外注費 | 労務費 | 直接経費 | 粗利 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 案件全体の実態 | 500万円 | 300万円 | 96万円 | 4万円 | 100万円 | 20.0% |
| 当月(外注費が翌月へずれた) | 500万円 | 0円 | 96万円 | 4万円 | 400万円 | 80.0% |
| 翌月(外注費だけが載る) | 0円 | 300万円 | 0円 | 0円 | −300万円 | — |
実態は粗利率20.0%です。外注費の計上が1か月ずれるだけで、当月は80.0%に見えます。翌月には売上を伴わない300万円の赤字が単独で立ちます。
同じ案件で労務費の記録が1割(9.6万円)抜けた場合、粗利率は21.9%です。実態との差は1.9ポイントにとどまります。
差が生まれるのは記録の形です。労務費は多くの人が毎日少しずつ積み上げるため、抜けても影響が分散します。外注費は1件で金額が完結するため、1件の紐づけ漏れがそのまま案件の粗利になります。
案件別に売上と原価を集める手順そのものは案件別の粗利を出す手順と、集計が合わなくなる3つの原因に整理しています。ここでは、そのうち外注費を案件に載せる側だけを扱います。
外注費が原価に載らない4つの穴
1. 発注書に案件番号が無く、支払だけが会計に残る
最も多い形です。発注書は出しているものの、記入欄に取引先名と作業内容しか無い。支払は会計側に正しく記録されますが、どの案件の原価かを判別する手がかりが伝票に残りません。
この状態では、月末に発注担当や現場に「この支払は何の案件か」を聞き回ることになります。担当が変わると、復元できない期間がそのまま残ります。
対処は発注書の様式に案件番号の欄を作ることだけです。番号が空欄の発注書を出さない運用にすれば、支払の伝票から案件へ戻れます。
2. 口頭やメールで発注し、金額の確定が請求書を受け取る時点になる
急ぎの作業を電話やチャットだけで依頼し、発注書を後回しにする。この場合、金額が社内の記録に現れるのは請求書が届いた時点です。
問題は2つ起きます。1つは、案件の原価が請求書の到着まで空欄のまま進むこと。もう1つは、依頼した時点で合意した金額が残らないため、請求額が想定と違っても比べる相手が無いことです。
対処は、依頼と発注書の順序を入れ替えないことです。作業を止めたくない場合でも、依頼した当日に発注書を出して金額を確定させます。金額が決まりきらない作業なら、上限額を書いた発注書を先に出す形にします。
3. 追加作業の発注を出しておらず、請求だけが後から来る
進行中に仕様が変わり、協力会社に追加作業を頼む。当初の発注書はそのままで、追加分だけが後から請求される形です。
案件の原価は、請求が届くまで当初の発注額のままです。締めた月の粗利は正しく見え、後の月で原因の分からない原価が増えます。
対処は追加のたびに発注書を出すことです。書き方は後述します。
4. 検収の記録が無く、何に対する支払かが後から辿れない
納品物を受け取って作業は進むものの、検収書を作らない。支払は請求書だけを根拠に処理されます。
この形では、支払と受け取った成果物の対応が記録から消えます。金額は合っていても、何に対して支払ったかを示す記録が社内に残りません。
対処は検収書を作り、発注書と同じ案件番号を書くことです。検収の基準は発注書の側にあらかじめ書いておきます。
見積から支払まで、数字が引き継がれる形を決める
外注費が案件に載る状態とは、4つの段階で同じ数字が引き継がれている状態です。
| 段階 | 案件番号 | 金額 | 数量・工数 |
|---|---|---|---|
| 自社の見積 | ここで採番する | 顧客への提示額と外注の予算を同時に決める | 明細ごとに置く |
| 外注への発注書 | 見積から引く | 見積で置いた外注予算の範囲で決める | 見積の明細から外注に出す分を切り出す |
| 納品・検収 | 発注書から引く | 発注書の金額と照合する | 納品された数量を発注数量と突き合わせる |
| 請求・支払 | 検収書から引く | 検収した金額と一致するかを見る | 検収した数量で確認する |
案件番号の列が上から下まで通っていれば、支払の伝票からその案件の原価に戻れます。
切れやすいのは2行目です。見積は自社の様式、発注書は取引先ごとの様式になりやすく、ここで番号の受け渡しが止まります。取引先の様式を使う場合でも、備考欄に自社の案件番号を書けば列はつながります。
金額の列にも順序があります。外注の予算は見積の時点で決め、発注書はその範囲で出します。逆にすると、発注額の合計が見積の外注予算を超えてから気づくことになります。
発注の時点で予定原価として置く
外注費を案件に載せるタイミングは、支払の実績ではなく発注です。発注書を出した時点で、その金額を案件の原価に置きます。
支払を待つと、原価は1〜2か月遅れて案件に着きます。月次で締めると、この遅れがそのまま冒頭の表の形になります。
金額は3つの時点で確定に近づきます。
- 発注の時点 — 発注額を予定原価として案件に置く。月次のブレはここで消える
- 検収の時点 — 受け取った数量で金額を確定させる。発注額と差があれば理由を残す
- 請求の時点 — 検収した金額と請求額を照合する。一致しなければ支払の前に戻す
発注額と請求額が違う場合、差が出た理由を案件側に残します。数量が減った、追加作業が入った、単価が改定された。理由を残さずに金額だけを上書きすると、次の見積で同じ想定を繰り返します。
追加作業は、発注書を分けて出す
追加のたびに当初の1枚を書き換えると、金額は最新の状態になります。ただしいくらからいくらに増えたのか、増えた分が何の作業なのかは残りません。書き換える前の版が消えるためです。
分けて出すと、案件の外注費は次の形で残ります。
| 発注書 | 対象の作業 | 金額 |
|---|---|---|
| 1枚目 | 当初の見積範囲 | 200万円 |
| 2枚目 | 画面追加(仕様変更分) | 30万円 |
| 3枚目 | データ移行の再実行 | 20万円 |
| 合計 | — | 250万円 |
当初200万円で見積に置いた外注費が250万円になったことと、増えた50万円の内訳が同時に分かります。
この記録には2つの用途があります。1つは、次に似た案件を見積るときの材料になること。もう1つは、顧客への追加見積の根拠になることです。
外注費だけが50万円増えて自社の売上が動いていない場合、その50万円は自社の粗利から出ています。
外注単価の改定を、受け取れる状態にしておく
協力会社から単価改定の連絡は届きます。人件費や資材費の上昇を反映したもので、自社が顧客に出す値上げと同じ性質のものです。
連絡を受けた時点で必要なのは、影響範囲の特定です。次の3つが揃っていれば、その日のうちに出せます。
- その会社に発注している進行中の案件の一覧
- 各案件の発注明細(作業内容・数量・単価)
- 各案件がどの見積に対応するか
揃っていない場合、改定を受け入れた後も古い単価のままの見積が出続けます。改定分は発注の時点で初めて表に出て、案件の粗利が見積より低く着地します。
外注単価の上昇は、自社が顧客に提示する金額を見直す根拠になります。据え置きを求める交渉より、自社の見積へ反映する順序を決めるほうが早く効きます。反映の手順は値上げの根拠を原価から作る手順と、価格転嫁が止まる4つの原因に整理しています。
支払サイトの差は、常時の立替になる
外注を使う案件では、支払が入金より先に来ます。この差は一時的なものではなく、発注が続く限り常時発生します。
月あたりの外注費が300万円で、外注への支払が翌月末の場合を並べます。
| 外注への支払 | 顧客からの入金 | 差 | 常時の立替額 |
|---|---|---|---|
| 翌月末 | 翌月末 | 0か月 | 0円 |
| 翌月末 | 翌々月末 | 1か月 | 300万円 |
| 翌月末 | 3か月後の月末 | 2か月 | 600万円 |
2行目の形では、毎月300万円を支払い300万円が入るため、月々の収支は釣り合います。それでも 300万円 × 1か月 = 300万円 が戻らないまま残ります。取引を続けている間、この300万円は自由に使えません。
外注比率の高い案件は、粗利率が同じでも資金の負担が大きくなります。案件を選ぶ基準に粗利率しか置いていないと、この差は見えません。
なお、外注先への支払期日には法令上の制約があります。日数や適用の範囲は取引の形態によって変わるため、契約の形式と支払条件は専門家に確認する前提で、ここでは資金の動きだけを挙げます。
検収書は、支払の根拠と品質の記録を兼ねる
検収書は事務作業の1枚に見えますが、残るものが2つあります。
1つは支払の根拠です。請求書だけで支払うと、社内には「請求が来たので支払った」という記録しか残りません。検収書があれば、受け取ったものを確認したうえで支払ったことが記録になります。
もう1つは品質の記録です。納品後に不具合が出たとき、確認できるのは「いつ何を受け取り、その時点で何が満たされていたか」です。検収書に対象と基準が書かれていれば、責任の分担を事実の側から詰められます。
検収の基準は、検収の時点で考えるものではありません。発注書に書いておくものです。何ができていれば検収とするかを先に決めておけば、受け取る側と出す側の判断が分かれません。
最初に手を付ける順序
すべてを同時に始める必要はありません。効く順に並べます。
- 発注書に案件番号の欄を作る — これが無いと他の対策が効かない。様式を1回直すだけで、運用は変わらない
- 発注書を出さない発注をやめる — 口頭やチャットで依頼した当日に発注書を出し、金額を先に確定させる
- 発注額を案件の予定原価に置く — 支払を待たずに原価へ入れる。月次のブレがここで消える
- 追加は別の発注書で出す — 当初分を書き換えない。増えた金額と作業の対応を残す
- 検収書を作る — 発注書と同じ案件番号を書き、検収の基準は発注書の側に置く
1つ目が最優先です。案件番号の欄が無い発注書を使い続けている間は、2番目以降をどれだけ丁寧に運用しても、支払の伝票から案件へ戻る道が作れません。
着手の範囲は進行中の案件だけで足ります。今月出す発注書から番号を書き始めれば、翌月の締めには外注費が案件に載った状態の粗利が出ます。
Set Plan は見積書を起点に発注書・検収書を作成し、案件に紐づけて保管できます。案件が持つ外注費は実績台帳の原価に含まれ、投下工数と合わせて案件別の粗利を一覧できます。現在の発注の流れをお伝えいただければ、案件番号を通す範囲と着手の順序をご案内します。